向日岳人自伝「味噌とブチャラティ」
○月○日
冗談半分で髪型をジョジョのブチャラティみたいにして学校に行った。テニス部の朝練に行くと跡部以下部員200名に笑われ、コートにはブチャラティコールが響いた。教室でも案の定笑われた。鬱だ。
□月□日
昨日散々だったので髪型を戻し学校に行った。すると朝練では「え?向日先輩?」「髪型全然違うじゃん」と言われた。 たかだか一日やった髪型が以前のを脳内から消し去ってしまう程強烈なインパクトを与えたというのか。その挙げ句担任には「どこの学校のものだ」と言われた。畜生、鬱だ。
◇月◇日
ブチャの髪型にして学校に行ったら皆ちゃんと反応してくれた。「その髪型が一番いいよ。」と皆が言ったが俺的には「二度と変えんなよテメー」という脅しに聞こえた。嗚呼、ずっとこの髪型でいなければならないのか、鬱だ。
◆月◆日
ブチャの髪型にしてから変な噂が流れている。
「向日は矢に体を貫かれた」「モノにジッパーをつけられる」「実はイタリア人だ」
誰だ、俺の事を本気でスタンド使いだと信じてるバカは。さらには跡部の奴にトイレで
「お前ここに6億もの財宝隠してるんだってな」
と言われた。なんでも部員の話によるとこいつが噂を流したらしい。一発ぶん殴ってやろうかと思ったが跡部は樺地を連れていた。こいつは中2のくせに身長190もあり、パワーが尋常でない。タイマンじゃまず負ける。畜生、ボディガードなんざつけやがって。嗚呼、鬱だ。
■月■日
大会に向けて必殺技を開発する事にした。技の内容は「バク宙しながらのボレー」、名付けてムーンサルトだ。この技を1日も早く完成させるため俺のダブルス相方である忍足侑士に協力を頼んだ。しかし侑士の奴は技の内容を聞いたとたん
「意味あるんそれ?」「なんでバク宙するんや?」
と関西弁でツッコんできた。やれやれ、氷帝の天才ともあろう者がこの技の凄さがわからんとは。
俺はどうにか侑士を黙らせ、練習を開始した。侑士が上げた球をバク宙しながら軽々と返す俺。完成は思ったより早そうだ。だがここで悲劇が起きた。着地をミスってしまった。正確に言うとネットをまたぐような形で着地したため、股間を強打してしまった。俺はあまりの痛さにのたうちまわり、そのまま気を失った。幸い大事には至らなかった。ただ一つ覚えているのはうすれゆく意識の中、侑士の奴が
「人生を悲観して自殺とかしたらあかんで〜」
とどこかで聞いたような台詞を言ったことだけだ。誰が自殺などするか・・・鬱だ・・・。
△月△日
ムーンサルトが完成した。この技には「体力をかなり使う」「着地をミスるとえらい事なる」という2つの欠点があったが2つとも克服した。まず前者だが体力が切れる前に速攻かけて倒せばいい事に気が付いた。後者はボレーの後スカイダイビングのような落ち方をすることで前のような事はなくなった。特に後者だが我ながら常人には思いもよらぬ発想だ。これで氷帝の優勝は確実だな。
▽月▽日
部活中に初めてムーンサルトを披露した。すると周りの奴らはハトが豆鉄砲食らったような顔をした。当然だ、俺が苦心の末に完成させた技だからな。しかし部活後こんな声が聞こえてきた。
「向日先輩の技凄くね?」
「ああ、見た目だけで実用性なさそうだけど。」
「つーか何であんなにジャンプできるんだ?」
「やっぱスタンド使って2段ジャンプしてんだろ。」
「ぎゃははは、それいえてる!」
何様だこいつらは。できもしないくせに陰口たたきやがって。そもそも俺がムーンサルトを開発した真の目的はブチャラティやスタンド使いなどのイメージを払拭するためだ。なのに全くの逆効果になってしまうとは・・・鬱だ。
▲月▲日
都大会の出場選手が発表された。正レギュラーは跡部、樺地、宍戸の3人、後は準レギュラーだ。ちっ、ムーンサルトを公式戦で披露できると思ったのに。だが氷帝にとっちゃ地区予選や都大会なんざお遊びみたいなもんだから正レギュラー全員じゃなくても楽勝だな。
●月●日
大波乱が起きた。なんと氷帝が都大会準々決勝にて3ー0で敗れた。しかも敗れたところが不動峰とかいう無名校にだ。ったく、準レギュラーのヘタレどもが、何やってんだ。いやもっとヘタレなのは宍戸だ。不動峰の部長の橘に6ー0で敗れやがった。なんでもこいつは全国レベルの実力者で、3ー0で敗れたのもこいつの作戦の仕業らしい。宍戸は当然レギュラーから外され、コンソレーションの出場選手はジローが入った。ムーンサルトの披露は関東大会までお預けか。俺を使えば間違いなく勝てるというのに。
◎月◎日
コンソレーションは氷帝が勝利した。当然だ。しかしどうしても腑に落ちないことがある。それは樺地をダブルスに起用したことだ。どうせ正レギュラーをダブルスに起用するんだったらダブルス専門の俺を使えっつーの。しかも樺地の奴は試合中得意のコピー能力を使いやがった。そのうち俺のムーンサルトまでコピーされるんじゃないだろうか。鬱だ。
◯月◯日
跡部に連れられ青学の近くのストリートテニス場に行った。すると不動峰の橘の妹と一緒に青学の桃城がいた。その後1年の越前も来た。2人に俺と侑士がダブルスの試合を申し込んだら断りやがった。相方がヘッポコなのでいやだ、というのが奴らの言い分だ。やれやれ、ダメなのを他人のせいにするとは実力のない証拠だ。
しかし越前が跡部に向かってこんなことを言いやがった。
「そこのサル山の大将シングルスやろーよ。」
この1年坊主が、山吹の亜久津を倒したから調子にのりやがって。それにサル山の大将ってことは俺達もサルなのか!?氷帝でサル顔なのは樺地ぐらいだぞ!?
まあ俺的には
「そこのブチャラティシングルスやろーよ。」
と言われなくてよかった。
俺、ダブルス専門だし、ムーンサルトを見せるわけにもいかないし、何よりあの亜久津を倒したんだからシングルスじゃ分が悪いからな。
その後学校に戻る途中跡部に
「ハハ、サル山の大将だってよ。」
と言ったら
「お前こそギャングの幹部じゃねーか。」
と返された。鬱だ。
☆月☆日
なんと宍戸の奴が正レギュラーの滝を6ー1で敗った。滝は正レギュラーから外れ、代わりに宍戸・・・じゃなくて準レギュラーの日吉が入った。宍戸は納得できなくて監督の榊の所に直談判に行った。そして自慢のロン毛を切ることで正レギュラーに復帰することを許された。やれやれ、俺にシングルスを申し込んでこなくてよかったぜ。まあダブルスなら100パーセント勝つ自信があるが宍戸が挑んでくる事はないだろうな。
★月★日
宍戸が鳳と一緒にダブルスの試合を申し込んできた。ありえない事と思っていたがまさか挑んでくるとは。俺と侑士は当然受けた。気を付けるのは鳳の時速200キロ近いスカッドサーブぐらいだ。この試合、俺のムーンサルト殺法でかき乱せば楽勝だと思っていた。しかし宍戸の野郎が試合開始後とんでもない動きを見せやがった。こっちがボールを返したと思ったらいつの間にか宍戸の野郎が打った方向にスタンバってやがる。まるでワープでもしているかのようにだ。おまけにライジングで打つため打球が速いので、ムーンサルトで返す暇もない。そして試合の結果は俺達の負けだった。監督の榊にバレたらレギュラー落ちしちまう。それだけは勘弁してくれ、と頼んだら
「イタリア料理をおごるんだったら考えてもいい」
と言ってきた。なんだイタリア料理って、俺へのあてつけか。だが背に腹は替えられないのでしかたなくその条件をのんだ。鬱だ。
※月※日
宍戸と鳳に約束通りイタリア料理をおごるはずだったが何故か跡部と樺地とジローまでついてきた。どうも宍戸の奴が喋ったらしい。ったく、余計なことしやがって。その後レストランにに入ったが変な店だった。店にはメニューがなく、店長が決めるというシステムだ。そしてまずミネラルウォーターが配られたが、それを飲んだジローの眼球がしぼんでフニャフニャになった。何事かと思ったらジローの眠気が吹っ飛び、奴は「起きた」状態になった。店内がやかましくなり、その事で店長に注意を受けたら
「ハズカC・・・」
とかぬかしやがった。んなセリフ聞いてる方がハズカCくなるつーの。その後樺地の奴が好物のピザをバクバク食い始めた。すると「ウス」しか喋らないはずの樺地が他の言葉を喋った。もっとも
「勝つのは氷帝・・・です。」「もう食えません・・・。」
の二言だけだが。その後メシを食っていく中で鳳の肩凝りや宍戸の虫歯や俺の荒れている胃が治ったりしたので変に思い俺は厨房に行った。厨房に入ると店長がいきなり包丁を投げてきた。なんとかかわす俺。すると店長が掃除用具一式を出して厨房を掃除しろと言い出した。なんでも俺が入った時に汚い手であちこち触ったのが気に食わなかったらしい。確かに厨房は清潔にするもんだがだからといって何も包丁投げることねーだろ、死ぬとこだったぞ。そして他のやつらが帰った後も掃除をさせられ、しかも侑士が財布を忘れたため、勘定は全額俺が払った。その挙げ句さっき治ったはずの胃がまた荒れてきた。鬱だ。
?月?日
関東大会の初戦の相手がなんといきなり青学に決まった。ちょうどいい、この間のこともあることだ、俺のムーンサルトを青学の連中にかましてやるぜ。そして勝つのは俺達氷帝、負けるのは奴等青学だ。
〜月〜日
ついに関東大会の日がやってきた。初戦の青学戦で俺と侑士はダブルス2に抜擢された。ちなみにダブルス1は宍戸と鳳・・・畜生、負けなければ俺達がここにいたのに。ダブルス2の相手は菊丸と大石・・・じゃなくて桃城だった。試合開始後すぐに俺はムーンサルトをかました。相手の2人はあっけにとられていた。どうだい、ブルっちまう特技だろう。そして菊丸が中途半端なアクロバティックかますんで俺のプライドが刺激されちまった。俺はもうエンジンが全開になった。そして相手のサービスゲームをブレイクした後、俺はこう言った。
「おい菊丸、もっと飛んでみそ」
実はこのとき台詞をかんでしまい、「飛んでみろ」と言うつもりが「みそ」になってしまった。すると侑士が俺の方に来たので台詞をかんだことについてつっこむかと思ったら
「何でボラーレ・ヴィーアって言わへんねん」
と言ってきた。ちょっと待て、ボラーレ・ウィーアは「飛んでいきな」だぞ、「飛んでみろ」とは微妙にニュアンスが違うだろうが。つーかそれ以前に何で俺がイタリア語を喋らなならんのだ。侑士、お前まで俺をブチャ扱いするのか。それはさておき試合は4ー0まで進んだ。しかしこの時やつらはオーストラリアンフォーメーションの態勢をとってきた。このときから格段にコンビネーションがよくなりやがった。くそう、急造コンビのくせしやがって。そして4ー4に追いつかれたとき俺の体力はもう無かった。俺の体・・・ほんのちょっぴりでいい・・・もう少しだけ動いてくれ・・・。そして5ー4と逆転されてしまった。そしてやつらはとどめに放った時間差スマッシュの時に
「アリーヴェデルチ!」
と言った。なんでイタリア語で「さよならだ」と言うんだ。結局俺達は6ー4で敗れた。そして試合後の握手の時の挨拶は
「ディ・モールト・グラッツェ!」
だった。「俺の前でイタリア語を使うな!」と言いたかったがムーンサルトの多用が原因で話すことすらままならかった。つーか、俺自身の言動もブチャに似てきた気がする。それでその後の試合だが第6戦の補欠戦までもつれ、一回戦は青学が勝った。俺達の夏は終わった・・・。